NAIST自然言語処理研、最初の1学期(文系卒 秋入学)
とはいえ、これより先に読まれるべき記事はたくさんあるので、特に小町先生のサイトにある内容などはベースとして書いてみます。
なお筆者は、東京の文系学部卒でエンジニア職等を経てNAIST情報科学領域に入学し、現在は自然言語処理の研究を頑張りたいと思っている人です。次の理由からNAIST自然言語処理研(渡辺研)を進学先に選びました。
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関心である作文・読解支援や自動誤り訂正の研究がされている
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教員が3名と多い
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文系でもサポートが充実しているのでキャッチアップしやすい(と聞いた)
NAISTに入学してよかったか
よかったと思います。受けられるサポートについて、先生方には聞きたいことがあればいつでもと言っていただいており、その中には文系出身の方もいるので、幅広いトピックについて相談できます。先輩方の研究も面白いものが多くあり、また中にはトップとされる会議に論文を通している方もいるので、様々な学びがあります。
さらに自然言語処理系の研究室が少なく数えて3つあるので、他の研究室との交流などから刺激を受けたりもしやすいと思います。卒業までの要件を満たす中で、他の自然言語処理系の先生からレビューを受けることもできます。
一方、思ったより大変だったのは、研究に必要な基礎知識を身につける部分です。ベクトル解析などで数式の変換を一つずつ追っていくような、基礎的な数学のトレーニングを受けたいと思っていましたが、そのような授業は2021年度はありませんでした。また後述のように、秋入学だといろいろ苦労があるなと思いました。
ところで他の学生と一緒に学ぶ恩恵については、似たバックグラウンドや関心を持った人と話せるので、分からない部分について知恵を出し合ったり、周囲に刺激を受けてモチベーションを維持したりしやすいです。自分は文系卒社会人という点で不安がありましたが、自分の周囲では元文系の人が3割くらい、社会人を経て入学した人もそれなりにいるので、孤立感はないです。学部は関東だった人も多いです。
また、これはNAISTというより大学院に来てよかった点ですが、当然ながら研究に気兼ねなく時間を注ぎ込めます。今は良質な教材がWeb上に山のようにあって、結局自分もそれらを読むことが多々あるくらいなので、学習効率がよい人、外部から刺激を受けなくてもモチベーションを高く保てる人などは、わざわざフルタイムの学生にならなくてもオンラインで修士号を取ったりできるかもしれません。ただ自分は物を覚えるのが速くなく、修士で専攻を変えたこともあるので、研究にきちんと向き合える環境に身を置くことができてよかったです。
フルタイムの学生になることに伴う金銭面の懸念も、NAISTの寮に住めば支出を一定程度抑えられるので(自分はタイミングが合わず、次に安い選択肢である団地を選びましたが)低減できると思います。
秋入学してよかったかどうか
年に2回タイミングがあるのは素晴らしいことで、自分は10月に入れたことに感謝しています。ただ、どうしても様々な学習のスケジュールを秋入学の人に合わせるモチベーションは研究室の運営上高くならないようなので、特に他分野から秋に入る場合はよく準備してからにするのがよい気がしました。
これは場合によると思いますが、自分は研究室での勉強会が半年ぶん進んでいたところに合流する必要があったので、もっと機械学習や深層学習まわりの勉強をしておけばよかったと思いました。他の方の発表をなるべく深く理解するためにも、頻繁に使われる手法について把握しておくべきでした。
またGPAを高くしたい場合は、授業が立て込んだときに学習時間が不足しないよう、情報理論など一般的な情報系大学院の入試で問われるような知識は事前に学んでおけばよかったと感じました。
以上を踏まえて、入学前の学習について振り返りをまとめてみました。
入学前にやってよかったこと
- 統計検定2級の取得
- 入試でアピールできますし、機械学習や言語処理の学習にあたって役立つ場面が多々ありました。
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いわゆるけんちょん本を読みましたが、レーベンシュタイン距離など言語処理に関わる話題も出てきますし、よかったです。
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やらなくて後悔したこと
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機械学習の基礎
- 有名な高村先生の本を、最初の数章だけでも入学前に進めておけば楽になる場面があったと思います。
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深層学習の基礎
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オライリーのゼロつくシリーズや、Courseraで有名なAndrew Ngの講義など。後者なら最近の話題もある程度カバーされていますし、動画(以下)があるので入学前でも続けやすかったと思います。
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研究室で必修の勉強会の教材について質問
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どんな知識が必要になるのか確認し、それを目標に準備できるとよかったと思っています。渡辺研だと、以下の教材がM1向け勉強会で使われています。
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2022/10/06追記
先日、今年の秋学期新入生と話していて、いくつか書き足したくなったことがありました。
ひとつは英語についてですが、秋入学だと、同期に占める留学生の率が高くなる傾向があります。なので、英語はできると多少コミュニケーションが取りやすくなるかと思います。もし英語が苦手なら、たとえばTOEFLの教材でキャンパスにおける会話での頻出表現など学んでおくとよいかもしれません。とはいえ、基本的な読み書きができれば、特に修士の学生として活動するにあたっては、それほど大きなトラブルは起きない気がします。
もうひとつは、上記の、勉強会が半年分進んでいた件ですが、今年の渡辺研では、秋入学者には秋入学者向けの会が開かれるようです。今年は留学生が多数派なので英語メインになりそうですが、英語が特別苦手でなければ秋入学のデメリットは特にないという感じになりそうです。